生徒の皆さんに伝えておきたいこと ~離任の挨拶~
2020年3月31日 20時39分今年、いろいろな場面で先生方を通して生徒の皆さんにお願いしてきた一部を列挙してみます。
1 夢出せ!知恵出せ!元気出せ!
これは、人生を生き抜くための魔法の言葉です。夢(目標)をもって、それに向かう知恵(道筋)を見つけることが重要です。そして、なぜ自分はこの夢を持ったのか、志や理由・根拠を十分に考えることで元気(目標遂行の原動力)が湧いてくるのです。
今、大きな夢がないことを嘆く必要はありません。今すぐに実現できない一つの大きな夢を持つよりも、千の小さな夢・目標を見付け、達成していくほうが実際的です。今は夢達成の練習をしていると考えてほしいと思います。一つ一つ積み重ねているといつか大きな夢が見つかるはずです。だからこそ、今は目標達成の原動力である“志”を磨くことが大切です。
2 夢の見つけ方
夢とは何か。「夢」=「ウォンツ」ではありません。つまり、自分のしたいこと、イコール夢ではありません。それは、「ニーズ」、「シーズ」が大切だからです。「ニーズ」とは、「望み」人がそれを「望んでいる」かということです。これは、人間社会で生きていくうえでとても大切なことです。人が望まない夢はおそらくいい夢とは言えません。もう一つ、「シーズ」も重要です。つまり、自分の中に「種」があるかということです。しっかりと勉強していると自分の中にある種が見つかります。ただし、教室、家の机の前だけが勉強の場ではありません。生活そのものを勉強の場とします。
3 なぜ勉強するのか
それはひとえに楽しいからです。ただ単に面白いからです。これが一番の理由です。だから、勉強する楽しさ、おもしろさをつかんでください。もし、おもしろくならなかったら先生方が悪いのです。先生に思いっきり、文句を言いましょう。「楽しい授業、おもしろい授業をしてください」と。また、ぜひ先生方にどうすれば楽しくなるのかとことん聞いてください。決して、勉強は苦しいけどいつか役に立つ時がくるからとか、楽しくないけど高校入試があるから、等の理由で勉強をしないでください。
本校の先生方には、「生徒が教科に興味を示さないのは、先生方の授業がおもしろくないからだ。それと同様に、自分を好いてくれないのは、自分が生徒に好かれるようにしていない、生徒を愛していないからだ。もし、生徒が自分の方を向いていなかったらそれを自分の方に向かせるのが教師の仕事であり、それこそが教師のやりがい、生きがいで、醍醐味がそこにある。」と本校の先生方には伝えています。先生方は楽しい授業、おもしろい学級づくりに努めています。だから、生徒の皆さん、保護者の皆様、まず先生を信じてください。ぜひ信頼してほしいと思います。
4 気づき考え行動する
私は「気付き考え行動する」とよく言ってきました。これは、「知行合一」という考え方をわかりやすく説明するのにいいと感じたからです。つまり、気付いたということは行動が伴うことだ(行動できなければ気付いたとは言えない)という考え方です。
「自ら省みて直くんば千万人と雖も我往かん」という老子の考え方が好きです。自分が志を立てたならば、千万人に反対されようと、楽しみながら自分は自分の道を突き進むということです。今年の3年生が入試において、自分の道を切り開く姿を頼もしく感じました。まさに、精一杯の努力をしながら、自分の信じた道を突き進み、見事難関を突破してくれたことに感謝します。
5 緊張と弛緩
簡単に言うと、「やるときはやる」ということです。「よく遊び、よく学ぶ」ということです。いつも緊張していては、大きな力を生み出すことができません。今の2年生はメリハリがついてきて、大事な時に実力を発揮できるようになってきましたね。本番に強いと言われるゆえんです。1年生はいつも少し緊張のしすぎかもしれません。大きくジャンプする際に、深く沈み込む動作が必要であるように、緩めるとき、踏ん張るとき、力を出し切るときなど、経験を積んで力の入れ方を学んでいくと、きっとすばらしい学年になると思います。どんなに成長してくれるのか、本当に楽しみです。
6 過去と他人は変えられない、自分と今は変えられる
言葉通りの意味です。他人は変えられません。他人が変わらないのは、自分が変わらないからです。相手に変わってほしかったら、まず自分が変わることです。「人間関係の不思議は、自分が相手の心の中にあると信じたものが、相手の心に育ってくる(ミハエル・ハミルトン)」と述べています。相手をいやな奴だと思えば、相手の中にいやな心が育ってくる。相手をうっとうしいと思えば、相手の中にうっとうしさが生まれてくるのです。逆に、相手を尊敬すれば尊敬できる何かが育ってきます。これは間違いありません。36年間の教員生活で実証済です。ですから、他人に対して、この人にはこんないい所があると念じ続けてください。1年後には、間違いなくそんな人物になってくれます。友人に対して、相手が自分を好きになってくれたら、私も好きになるではなく、相手は好きになってくれなくても私はこの人が好きと思ってほしいと思います。そう心に念じ続けると、相手にも同じ心が育ってきます。ぜひ試してみてください。
相手に変わってもらおうとせず、自分が変わりましょうね。
7 温かな心から出る温かな言葉
言葉遣いの大切さはこれまで十分に伝えてきましたので、省略します。言霊の国ですから、言葉を大切にしましょう。
伝えたいことはまだまだたくさんありますが、このあたりで終わりにします。
ただ、36年の教員生活を終えて、本当に楽しい日々でした。教職って、本当におもしろいです。教師の指導や支援、声掛けであっという間に生徒が激変するからです。恐ろしい部分もありますが、だからこそ1日1日緊張の連続で、それも刺激的です。
教員生活の中でも、この学校での1年は最高でした。素晴らしい生徒、保護者の皆様、地域の皆様、先生方に恵まれたからです。生徒の皆さんのおかけです。保護者の皆様、地域の皆様、先生方のおかげです。ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
実は、つい先日まで、ごくごく最近まで、今年度の1年生が卒業するあと2年しっかりがんばろうと思い、アクティブラーニング、SDGs、道徳科、ローカル5G設置に向けた取組等、来年度への準備を進めていたのですが、どうしてもやらねばならない大切なことに気付いてしまいました。行動が伴わなければ、気付いたことにはならないというのが私の信条ですから、いつも生徒に言ってきたいた以上、それが困難な道であっても楽しみながら進んでいくのみです。そういえば、「人生は選択の連続だ。人生の岐路で皆さんは困難だと思われる道の方を選びなさい。ピンチと思えるときこそチャンスです。」なんて言ったこともありましたね。
最も大切な存在である久万中生にとって、私ができる最善策を何かと考えたときに考え出したのがこの選択でした。皆さんとの出会いが私の考えを変えてくれました。「人は出会うべき人に必ず会うことができる しかも一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに(森信三)」。皆さんとの出会いは、偶然ではなく必然だったのです。ただし、これはあくまで私の主観であり、皆様にとっての最善策ではないかもしれないことをお許しください。今後も、自分なりの挑戦をしたいと思います。
皆様のご健康、ご多幸をお祈りして、お礼の言葉といたします。
小田哲志